黒柳徹子さんがADHDかもしれないという話を聞き、改めて800万部のベストセラーとなった彼女の自伝『窓ぎわのトットちゃん』を読んでみました。
小学校に入学したとき、机にじっとすわっていることができず、授業中に窓際に立ってチンドン屋さんを呼び込んだり、つばめに話しかけたり。フタの付いた机が珍しく、授業中に100回も開け閉めする。絵は画用紙からはみ出して机に描いてしまう。
そんなトットちゃんは3カ月で退学になってしまいます。
別の黒柳さんの著書『小さいときから考えてきたこと』には、LD(学習障害)だったと書かれています。
“私はこの退学になった理由を、子どもらしい好奇心の旺盛な元気な子どもだったから、という率直な気持ちですべて本当のことを書いた。ところが、(中略)『窓ぎわのトットちゃん』をLD(学習障害)の子を多く診ていらっしゃる専門家や研究者から見れば、何もかもがLDに当てはまるということだった。こんなこと私は思ってもいなかった。”
こう書かれていますが、じっとしていられず、興味の向くままに行動してしまう様子から、ADHD(注意欠陥多動性障害)だった可能性もありそうです。
いずれにせよ、トットちゃんは退学になった後に通うことになったトモエ学園で、素晴らしい教育を受け、なんと転校したその日から机にすわっていることができるようになります。
好奇心旺盛なトットちゃんはたくさんの失敗をするのですが、毎日が楽しくてしかたないと感じるようになり、生き生きとした毎日を送ります。そして授業中に勝手な行動をとって迷惑をかけることはしなかったようです。
トモエ学園の小林校長先生の教育方針がスゴイのです。
“まず、私のクラスは九人だった。席は決まっていなくて、好きなところに座ってよかった。そして、朝学校に行くと、1日にある時間割の全部科目の問題が黒板に書いてあって、好きなのからやってよかった。だから、結果的には自習であり、分からなくなると先生のところに行って聞くので、だいたい先生と一対一で勉強することになった。”
好きな科目から好きな順に勉強できる。
興味のないことには集中できないとしても、興味のあることには集中が続くのがADHDといわれます。
勉強を強制せず、子どもの興味を重視するこの教育が、ADHDの子の能力を伸ばすのに適しているのかもしれません。
今年、企画・編集して小学館から出版された『発達障害の子の脳をきたえる レイティ博士監修 笑顔がはじけるスパーク運動療育』で強調していることと同じです。
ADHDだったといわれるエジソンは、やはり入学後数カ月で学校を退学させられます。しかし息子の才能に気づいていた母は学校に適応できないエジソンに「そんな学校行かなくていい」と自分で勉強を教え、発明に打ち込める環境を作ったといわれています。
ADHDなど発達障害を持った人には天才も少なくないようですが、子ども時代に自信を失うことなく、興味の芽を摘むことなく、持っている力をのびのびと伸ばすにはどうしたらいいのか。家庭や学校など環境がとても重要ですね。